第6回 満身創痍のカヌーで最大の難所へ

風、潮、海の深さなどによって様々な波が立つ。この日は朝から荒れ模様だった。(提供:関野吉晴)(写真クリックで拡大)

 フィリピンと台湾の航行許可が無事に得られ、2011年5月11日、雲ひとつない空の下、3年目の航海をスタートした。

 いよいよ両国をまたぐ最大の難所、ルソン海峡に挑む。いくつかの島を経由しながらの、およそ400キロの海峡横断だ。なかでも山場は2カ所ある。バブヤン島からバタン諸島までの88キロと、ヤミ島から蘭嶼島までのバシー海峡120キロだ。

 この海峡は黒潮の通り道になっている。黒潮に乗れば難なく航海できそうに思えるのだが、そうはいかない。干満によって太平洋と南シナ海の間で動く潮流がある。この潮流は東から西に流れることもあれば、逆の流れになることもある。それらを計算に入れて航海しなければならなかった。

 だが、バブヤン島を出航する時から手間取った。帆を上げる時に注意を怠って、ブーム(帆桁、帆をぴんと張っている竹で出来た横棒)を折ってしまったのだ。アクシデントが起こった時にどのように対処するかが大事。すぐに用意してあった2メートルほどの副木を当ててロープでしばって事なきを得た。骨折の治療と同じだ。