第2回 きっかけは“有人宇宙船”
――堀江さんはイーロン・マスクに会っていますね。
ええ。スペースXが燃焼実験に成功した翌年ですね。僕は、アメリカの民間宇宙開発の関係者に一通り会いました。イーロン・マスクはその一人です。
民間で最初の有人弾道宇宙飛行コンテストを主催したXプライズ財団のピーター・ディアマンティスなんかは「彼はすごい」としきりに言っていましたね。
――どんな人物ですか。
オタクっぽい人でしたね(笑)。
スペースXは秘密主義で、ほとんど情報はもらえませんでした。でも、しっかりとした事業家ですよ。のちにスペースXには政府のお金が入りますが、ロケットエンジンをつくって燃焼実験を成功させるところまでは、自前で資金をかき集めてやったのですから。
ただ、彼はゼロからロケットエンジンを開発したわけではないんです。アポロ計画の月着陸船に使われたエンジン技術を応用しました。それは、アポロ計画からスペースシャトルに切り替わってから、ずっと置き去りにされていた技術です。
具体的には、ピントル型インジェクターといって、つくりやすく、壊れにくく、しかし推力の制御にも優れているというインジェクターの形状がある。その見捨てられていた技術を復活させたことで、彼のエンジンはすごく安くできたんです。