ぼくは、ふたたびニューファウンド湖にカヤックを浮かべ、意気揚々と漕ぎだしました。

 東西から伸びた岬が、くっつきそうなほど狭まった箇所を抜けると、そこはもうムース湖でした。

 前方に小さな島が現れ、その脇を通りすぎた時、1羽のルーンがバシャバシャと慌てふためいて、草の陰から飛び出してきました。

 <またか……>

 どうやら、ここでも、ルーンが卵を温めていたようです。

 いったい何組のルーンが、この「バウンダリー・ウォーターズ・カヌー・エリア・ウィルダネス」の中で巣作りをしているのでしょう。

 僕が気づかなかっただけで、これまでに通ってきた入り江や島、湖岸のいたるところにも、きっと巣があったのです。

 後ろをふりかえると、旅をしてきた森と湖の世界が、目に見える以上に、生命の活気に満ちて、あたたかな光を放っているように映りました。

 さらに南へと進むと、いよいよウィルダネス保護区の境界線を抜け、湖岸に木造の家々がちらほらと並んでいるのが見えてきました。

つづく

大竹英洋

大竹英洋(おおたけ ひでひろ)

1975年生まれ。写真家。一橋大学社会学部卒業。1999年に米国のミネソタ州を訪れて以降、北アメリカ大陸北部に広がる湖水地方「ノースウッズ」の森に魅せられ、野生動物や人々の暮らしを撮り続けている。主な著書に『ノースウッズの森で』(「たくさんのふしぎ傑作集」)、『春をさがして カヌーの旅』(「たくさんのふしぎ」2006年4月号)、『もりのどうぶつ』(「こどものとも 0.1.2.」2009年12月号)(以上、すべて福音館書店)などがある。また、2011年3月NHK BSの自然ドキュメンタリー番組「ワイルドライフ カナダ ノースウッズ バイソン群れる原生林を行く」に案内人として出演。近著は「森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して」(月刊 たくさんのふしぎ 2012年 09月号)
本人によるブログは「hidehiro otake photography」

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る