ぼくは、その詩を読み返しました。

 誰もいない、シラカバに囲まれた、湖畔のキャンプ地。

 気持ちよく降りそそぐ陽光と、風にさらさらとなる葉の音。

 そのなかで、声に出して何度も朗読しました。

 そうしていると、ふしぎなことに、心のなかに暗く立ちこめていた不安が、陽の光の向こうへと消えていくようでした。

 <ここまでだって、何とかやってきたんだ……その先は、進んでみてから考えよう。>

 悩んで待ち続けるのが嫌だったから、行動して返事を確かめたかったから、ぼくは日本を飛び出してきたのです。

 ホイットマンの言葉に背中を押され、明日ムース湖を目指すことに、もう迷いはありませんでした。

 翌朝はあいにくの雨でしたが、昼まで待って雨がやむと、テントをたたみ、荷物をまとめました。

 2晩を過ごしたこの湖を離れる前に、もう一度、湖面を見渡しました。

 もしジムに会えなかったなら、またここに帰ってくればいい。

 そのときには、ルーンのヒナが生まれているかもしれない。

 そうしたら今度は子育ての様子を撮影しよう。

 それもまた、きっとすばらしい体験になるにちがいない。

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