ウォルト・ホイットマンは、19世紀にアメリカの精神を自由詩で綴り、その後のアメリカ文学に最も影響を与えた詩人の1人と評されています。

 大学時代に何度も読んだ『ウォールデン 森の生活』を書いたヘンリー・D・ソローも影響を受けたことからその名を知り、はじめてのアメリカの旅で読んでみたいと思って、出発の直前に購入したのです。

 表紙には、白いシャツを着て、黒い帽子を斜めにかぶり、精悍な顔つきの、あご髭をはやした男の絵が描かれていました。

 右手の拳を腰に当て、左手はポケットに突っ込んだまま、不敵な面構えでこちらをじっと見つめています。

 アメリカを代表する詩人のポートレイト……。

 近寄りがたい雰囲気を醸し出しているその姿をじっと見ているうちに、ぼくは、やはり、これから会おうとしている、まだ見ぬ写真家のことを思い描かずにはいられませんでした。

 <果たしてジム・ブランデンバーグとはどんな人なんだろう……>

 明日にはジムの家があるムース湖に辿り着く。

 手書きの絵地図から、おおよその場所は推理したけれど、それから先の手がかりは、写真集に載っていたジムの家の写真だけ。

 どんな場所かもわからないし、広大な森の中から、一枚の写真だけを頼りに家を探すというのも、無謀なことかもしれない。

 それに、もし運良く見つけられたとしても、それからどうしたらいいのか、実際のところは何も考えていません。

 約束もないのに、いったいどうやって会ったらいいのだろう……。

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