第47回 ホイットマンの言葉
<都会の屋敷でぬくぬくと育ってきた犬が、本当に野生のオオカミよりも強くなれるものだろうか……>
ジャック・ロンドンの『野性の呼び声』の最後の1ページを読み終えたとき、主人公のバックのたくましさに感動を覚えたものの、そんな冷めた疑問が浮かんできました。
ルーンの撮影を終えてキャンプに戻り、ヒルに吸われた足首の消毒をすませても、出血が止まりません。
しばらく様子を見ながら、午後はずっと読書でもして過ごそうと思ったのですが、なかなか集中して物語に入り込むことができませんでした。
<明日にはカヤックの旅が終わってしまう>
そのことが頭をよぎるたびに、気分がそわそわとして仕方がないのです。
あまり長い物を読む気分でもないので、いくつか持って来た本の中から『対訳ホイットマン詩集』(岩波文庫・木島始編)を手に取ってみました。