ロッジの上空を小型機が旋回した。
「トーニャだ! トーニャが着いたよ!」
私は、空を仰ぎ見た。
ブーンと音を立てて、飛行機はまた遠くに去っていった。
機が降り立つ滑走路は、湖の向こう側のため、スティーブがリバーボートを出して迎えに行く。
私たちは留守番だったけれど、1時間も経つと、ロッジに大きな声が響いた。
「ただいま!」
女性ながらに逞しい体つきをしているトーニャの声は、太くロッジ内に響く。
まるでお父さんが帰ってきて、喜んで玄関に駆け出す子供たちのように、私たちはトーニャの帰りを迎えた。
けれどトーニャは、いきなり、
「げー、っほ! っほ! っほ! っほ!」
「うげぇぇぇ~」
と、肺のなかの空気を全て吐き出さんまでの、酷い咳をする。