第36話 待ちに待った、トーニャの帰還!
まずは、顔を撫でながら、口の中を覗き込んで、そのあと、肩の骨、背骨、骨盤のあたりの骨を確認する。
数匹を確認したところで、トーニャは言った。
「少し、太ったわね」
「え? そう?」
私には、どの犬も太っては見えない。
それどころか、1日1食しか与えられていないのだから、みんな、お腹のへこんだ痩せ犬たちである。
「ちょっと、多めにあげたでしょ?」
トーニャは、犬の体を触りながら言った。
「あ、あげた……」
私は、小声で言った。
「やっぱり?」
トーニャが、私の目を見つめる。
「え? でも……、なんだか、この子たちを見ていると、サービスしたくなっちゃうのよね……」ははは。
私は、苦笑いを返した。
つづく

廣川まさき(ひろかわ まさき)
ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/