さて、今回、話を伺ってきた農業環境技術研究所の三中さんのお話は、まずは「系統樹の蒐集」という、なにやら訳が分からないけれど面白そうな話から始まり、「チェイン・ツリー・ネットワーク」という図像言語の普遍性と威力を知り、「分類と系統」という一見、近しそうなものが、実は常に葛藤していることを垣間見、系統推定の科学が「アブダクション」というあまり聞き慣れない方法で成り立っていることを知った。

 すべて「系統樹」に注目することから始まった議論だ。あまりに幅広いので、深く突っ込んだ説明はできなかったものの、見た目、美しい系統樹から世界を見渡すだけで、これだけの広がりがあるのか、と驚いていただけたとしたら成功。

 その一方で、「だからなに?」という反応もありえるだろう。その疑問の半分は、インタビュアーであるぼくが、三中さんの議論をうまく掬い上げられていないことが原因のはずだが、とはいえ、かりに10倍の紙幅を割いて説明しても So what? と思う人はいるはずだ。

 そこで、三中さんのような「系統樹」の森を見渡す人が中心となって、新しい「科学」の研究分野が実に具体的な形で生まれつつある、ということを報告して最終回としたい。

『デカメロン』の作者として有名な14世紀のジョバンニ・ボッカチオによる『異教の神々の系譜』の写本図版。神話の神々の系図を描いたもので、写真の手前側が上。つまり、蔦の葉が垂れ下がるように、上から下へ親子関係が描かれている。(写真クリックで拡大)

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