第5回 文系理系の壁を超えた新しい科学がやってくる!

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 件の論文集の冒頭を飾るのは「「百鬼夜行絵巻」写本の系統」という、写本系譜にかかわる研究。室町時代から江戸時代にかけて模写されてきた「百鬼夜行絵巻」のうち、データが利用できる64の伝本を調べた。化け物の配列に着目して、それらがどう入れ替わったり、無くなったり、付け加えられたりしてきたかを示す「編集距離」という概念で指標化して、系統関係を推定している。

「これは分子生物学的な系統推定でDNAの塩基配列を扱うのと同じなんです。配列情報として記号が違うだけですから、完璧に同じ方法論。こういった写本の系譜については、イギリス中世のチョーサーの『カンタベリー物語』でThe Canterbury Tales Projectというのがあって、詳細な写本系図ができています。こういうものは、使ってる方法論、ソフトウェアから、全部、生物の系統樹の推定に使うのと同じです」

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 ここで言われているソフトウェアは本当に何種類もあって、用途に応じて使い分けるものらしい。個人的に興味をもっている古生物学の世界では、PAUP(パウプ、と発音されるようだ)が有名だ。カジュアルな古生物ファンであるぼくが読むような本でもしばしば言及されているので、知っている方も多いだろう。そして、「カンタベリー物語プロジェクト」で使われているのは、まさに同じソフトウェアPAUPなのである。