〈進化生物学も古生物学も、何千万年も前にさかのぼって恐竜を観察できるわけではない。系統樹を推定しても裏付けはない。物理や化学のように実験して確かめたりもできない。なにかの法則を導き出して、未来を予測することもできない。科学とは呼べないのではないか〉

 これに対して、研究者はこのように回答していた。

〈科学は手持ちのデータから仮説を立てて、検証する。新しい証拠があったら、それに応じて仮説を修正したり、抜本的に考え直す。系統を分析して推定し、たとえばこの時代のこの恐竜と、この時代の恐竜の間に、ミッシングリンクがあると指摘したりする。実際に、それに相当する化石が出てくれば、仮説は補強されるし、逆に相反する証拠(化石)が出てくれば、仮説を修正しなければならなくなる。そうやって、次第に真実に近づいていくことができる〉

 それを聞いた時、なんだかわかったような、分からなかったようなもやっとした気分になった。

 このエピソードを、統計学者として、進化生物学的な系統推定の理論にかかわり、系統樹について俯瞰的な視野をもつ、三中さんにそのままぶつけてみた。「創造論信奉者への、この反論って、適切だと思います?」と。

「うーん、あんまり、良い説明とは思えないなあ」と三中さんは言った。

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