19世紀に進化生物学が登場するまで、生物の系統樹という概念はなかった(もちろん、家系や写本の系譜のような概念はあり、しばしばツリーであらわされていたのは前にも述べた通り)。

 一方、人類は有史以前から、生き物のみならず、この世のありとあらゆるものを分類してきた。だいたい、日本語には、魚や鳥、などといった分類が進化論以前からあったわけだし、言葉というもの自体、名前を付けることによって分類することで成り立っている。

 つまり、人類はいつでも身の回りにあるものを分類してきたし、学問としての分類学(タクソノミー)も、古くからあった。今の科学につながる二名法による分類体系も18世紀、つまり進化論以前にカール・フォン・リンネが考案したものだ。

 分類することと系統を推定することは、どうやら、素性が違うことらしい。

 しかし、しばしば、混同される。

 もちろん、分類と系統がすっきりと一致するなら、ことは簡単だ。系統樹を反映して、分類を再考したら、直観的にも分かりやすく合理的な分類体系が完成した、というなら、どれだけ幸せだろう。

 だが、悩ましいことに必ずしもそうならないのである。

 三中さんは言う。

近代分類学の基礎を気づいたカール・フォン・リンネが考案した植物の分類体系。系統ではなく分類であることに留意。この図は1735年に出版された『自然の体系』に掲載された、花の形態に着目して全植物を24の大分類群(綱)にわけた植物分類の「検索表」だった。リンネによって、たとえばツバメであれば「Hirundo rustica」のように、ラテン語の「属名(Hirundo)+種小名(rustica)」の2語で記載する分類体系が定着した。(画像クリックで拡大)

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