第3回 ハヤブサがタカよりインコに近かったことが示すもの

「系統的な考え方、分類的な考え方、というのがあると思うんですね。僕は『思考法』と勝手に呼んでるんですけど、それぞれの思考法は使われる場面が違うんです。系統的な考え方っていうのは、例えば生物に限定するならば、それこそ時間的な発展の姿ですよね。分類というのは、ある意味、時空的にスパッとこう、切ったときの切り口のパターン。生物なら生物、言語なら言語ってオブジェクトを考えても、どういう視点でとらえてるのかという、その目線の置き方が違うと思うんです」

 三中さんによれば、「分類と系統はオブジェクトの多様性の理解を深めるための両輪」だ。両方ともないとダメで、しかし、これらは別物だ。

系統と分類の関係を図像化したヒュルブリンガーの本を拝見。(写真クリックで拡大)

「分類というのは、系統樹のツリーよりは、次元が1つか2つ下がったもののはずなんです。系統を時空的に切ったときの切り口のパターン、いわば、射影です。ある場合には分類的なとらえ方をした方が適切な場合もあるでしょうし、もう一方ではツリー、あるいはネットワークとして、時空的に変遷していくオブジェクトの姿を捉えたい時もあるわけです」

 タカとハヤブサが系統は違う。分子生物学的な研究で、これは間違いない水準だと思ってよいらしい。しかし、ある時点・ある地域の生態系を論じる時、両方とも「狩りをする鳥」猛禽類としてひとくくりに理解した方が合理的な時もある。その時、大切なのは系統ではなく、適切な分類だ。

 このあたりの議論は、素人の我々も、ざっくり理解しておくとよいのではないだろうか。

左は1888年に出版されたマックス・ヒュルブリンガーの大著『鳥類の形態学と体系学の研究』の3次元「系統樹」のひとつ。いちど分岐した枝がまたほかの枝と合流したりしていて、つまり、表と裏の図があって、3次元的に描かれている。右はその樹を輪切りにした断面図で、異なる時代における「分類」に対応する。これは系統と分類の関係を対応づけた見事な例で、ほかに類を見ないという。(写真クリックで拡大)