第2回 私たちはなぜ系統樹が好きなのか

20世紀半ばに描かれた「人種」間の混血を表示する系統ネットワーク。(画像クリックで拡大)

 前回、20世紀半ばに描かれた「人種」間の混血を表示する系統ネットワークを紹介した。これは系統樹ではない。いったん分岐したものが、またくっついたりする系統ネットワークだ。最近では、分子生物学の発展で、違う「種」であるとされるネアンデルタール人との混血についても話題になる。系統樹、ツリーは、人間の頭では非常に分かりやすくありがたいが、系統関係は、細かく見ていくとネットワークで理解しなければならない部分が出てくる。

「動物よりも、植物の方が例として分かりやすいですね。近縁群の中だけではなく、遠縁であっても交雑(ハイブリッド)が生じることがあって、系統ネットワークがぐちゃぐちゃになることがあります。さらに、生命の樹の根本で原核生物から真核生物が生じたときの細胞内共生のような、もっと大規模な交雑を究明するという研究の方向はもちろんあるんです。1個1個、枝の行く末をたどって、ツリーがネットワークになって、というのを丹念に追っていく研究ですね。今の情報技術ですと、分子レベルの膨大なデータから、いきなり複雑な系統ネットワークをバッと推定できます。おまけに、可視化技術も発展しているから、それをビジュアルで表現もできる。でも、そこから読み手が何を読み取れるのか、かなり懐疑的なんですよ。見て美しいし、絵として面白いんですけど」

 数十万もの分岐を持つ系統樹をコンピュータグラフィクスで表示できるソフトウェアが公開されている。それを使って、球状に描かれた複雑な系統樹を見せてもらった。これはネットワークではなく、ツリーを3次元的に表示したものだ。しかし、数十万もノードがあると、もう何がなんだか分からない。しかし、美しい。

3次元可視化プログラム〈Warlus〉により描かれた系統樹。左はコンピュータ・ウィルス「Code Red」の系統樹で、ノード(分岐)は30万以上。右は「生命の樹」でノードは18万以上。http://www.caida.org/tools/visualization/walrus/より許可を得て転載。(画像クリックで拡大)