第1回 「裏の仕事」は“系統樹ハンター”

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 さて、三中さんの「全貌の掴みにくさ」の理由はいくつかあると思うのだが、そのひとつは「農業環境技術」の研究者が、なぜ「系統樹思考」だとか「文化系統学」といったことにかかわるのかという点。

 三中さん自身「表の仕事」「裏の仕事」と冗談めかせて言うくらいである。

 ぼくの興味の中心は、明らかに「裏の仕事」なので、まずそこから出発することにする。「表の仕事」についても、心配ご無用、後でちゃんと関係してくる。

 三中さんの「裏の仕事」は進化生物学であり、その一面を一言でわかりやすく表現するなら「系統樹ハンター」だ。

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 系統樹、と聞いて、素人が素朴に想像するのは、様々な生き物がいかに進化してきたか、その様子を樹状にしてあらわしたものだろう。

 では、三中さんがハントし、蒐集しているのは、どんな系統樹なのか。

 三中さんのこの研究室の中には、様々な時代に様々な対象(オブジェクト、と三中さんは呼ぶ)を描いた系統樹が、あるものは本の形で、あるものは電子化されたデータとして、蓄積されている。電子データは外からは直接見えないが、本は書架に山積していて、部屋の中は森に似ている。それらは、どうやら「系統樹の森」なのである。