第13回 パタゴニア追想記 その(1)

謎のケープホーン

 ビーグル水道をひたすら南下していくとき海峡の左右にずっとアンデス山脈の“尾”のような山並みが続いている。氷河や雪に覆われている一帯で殆ど人の入ったことのない山々だろう。ぼくはヒマラヤを初めとした有名な巨大な山々の登頂競争よりも、無名の、しかもおそらく誰も登ったことのないだろうこれらの「さいはての山々」に挑んだ登山家を絶対的に評価する。

 海からも陸からも、とりつくだけで相当に困難だろうことが遠望しただけでわかるからだ。『ナショナル ジオグラフィック』2004年8月号の「大氷原 525キロを縦断」という記事に目を奪われた。

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 写真家と登山家の2人でカヤックをつかって水と氷原を突き進み、3000メートルを超える高山地帯を踏破している。そのなかには人を寄せつけない山として有名なフィッツロイもあるのだ。ぼくは3度目のパタゴニアの旅のときに、小型飛行機でこのフィッツロイの真上を飛んだことがあるが、そんなところから見ていてもまったく恐ろしい山だった。

 常に強風の吹き荒れているところで、そのときは飛び立った小型飛行機が強い風に押されるようにして斜めに進んでいた。ぼくは窓から後ろを見ていたのだが、飛び立った小さな空港がなかなか視界から消えなかった。飛行機が強すぎるむかい風で空中を押し戻されているような状態だったのだろうと思う。そういう一帯を重いカヤックを牽いて這うようにして行くこの2人の探検家の極限の旅に驚愕したのだ。