第13回 パタゴニア追想記 その(1)

 我々は4人のチームで行った。期間は1カ月。いくべき場所はわからなかった。パタゴニアといったらマゼランとダーウィンが旅し、世界で最初にこの辺境の地を著書にあらわしたところなので、できればその足跡の一端なりをかいま見たい、というおぼろげな願いがあった。けれどマゼラン海峡やビーグル水道を行くにも、定期航路というものは存在せず、結局は現地にいって、そのための方策を探るしかなかった。

 いろいろないきさつはあったが、幸運にも我々はチリ海軍の砲艦に便乗することができた。このへんの詳しい顛末はすでに2冊の著書に書いているので省くが、(軍事機密があるので)航行目的の明確でない軍艦に便乗し、何日かかるかわからないマゼラン海峡とビーグル水道を行く、という胸踊る旅に出られたことは僥倖(ぎょうこう)以外の何物でもなかった。

 チリ最南端の港町プンタアレナスを出航し、早くも2日後に世界最大規模の氷河の開口部(氷河の最先端が氷の壁となって海に落ちるところ)が沢山続く、いわば氷河銀座とでもいうような場所に到達していた。

 地球温暖化などの象徴的風景として、近頃しきりにパタゴニアの氷河の先端部分が海に崩れ落ちる光景がテレビなどに出てくるが、あれはモレノ氷河といって、車でその真向かいまで行っていつでもその様子を見ることができる観光名所のようなところの小規模な氷河の崩落模様を映しており、あの場所ではむかしから見られる光景で、別段地球の温暖化とは関係のない光景なのである。温暖化で氷河が影響をうけているのを示すのは氷河全体の後退、縮小化である。