多くはまだ想像の域を出なかったけれど、エンケラドゥスの氷プルームが内部海と岩石核の間の海底熱水活動に支えられている可能性、氷プルームの化学分析が進んでおり、水素やメタン、硫化水素、アンモニアといった地球の深海熱水と同じような物質やエネルギー源に満ちあふれている可能性、多種多様な有機物がすでに存在する可能性、が示されていたのだ。

中にはエンケラドゥスの惑星内部構造の想像図まで示し、エンケラドゥスにおける生命存在可能性について言及する論文まであった。

よっしゃ、やったろうやんけー!

それらを読むうちにボクは久しぶりに燃えてきたんだ。

「ちょっと待て、オマエら。地球の深海熱水環境を始めとする暗黒の生命生態系の駆動原理を突き止めたのが誰だと思ってやがる。地球だろうがエンケラドゥスだろうが、深海熱水の生命に関しては誰にも負けんぞ。深海熱水がある以上、宇宙だろうがなんだろうが、そこはオレのフィールドオブドリームス。よっしゃ、やったろうやんけー!」と思い始めたんだ。

それはまるで、ボクが最初にJAMSTECに来た時、JAMSTEC岸壁から見える海の美しさを見ながら感じた「深海の研究」に対して抱いた熱い想いと同じような感覚だった。

ずっと書いてきたように、ボクはこれまで青春を深海に賭けて突っ走ってきた。そう、地球の深海に。さすがにもう、恥ずかしくって「青春を」などと言えない年になってしまったけど、今またボクの情熱を傾けることのできる、誰も見た事のない未知の深海が目の前に現れたんだ。

しかもその深海には「生命の起源」だけではなくて、「生命とは何か」を解き明かすためのとびっきりの大ネタが隠されている可能性がある。それにそれは単なる夢物語じゃない。やる気になれば手の届かない「距離」でも「時間」でも「お金」でもないんだ。

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