実は「はやぶさ型ナヴィゲーションとフライバイサンプルリターンによってエンケラドゥス地球外生命探査をしようず」というアイデアを聞いたのはこれで2回目だった。1回目はアメリカのペンシルバニア州立大学のアストロバイオロジー研究部門のディレクターをやっているクリストファー・ハウスが2010年にJAMSTECでセミナーをやった時に聞いたのだった。

その時ボクは、はやぶさの事も、エンケラドゥスの事もあまり知らなかったので、「へえー、はやぶさはアメリカでも大人気なのね。エンケラドゥスって潮吹き衛星なのね」ぐらいのなんとも盛り上がらない反応だった。でも「確かに面白いアイデアだな」と、「アメリカはそんな事をやろうとしているのか」と、脳内メモリーインプットは完了していた。

なので、矢野さんの口から「エンケラドゥス地球外生命探査」と出た時、やはりエンケラドゥスが地球外生命探査のターゲットとしてホッテストなのかと痛感したのだった。

本気で打ち込めますか?

矢野さんは続けた。「興味があることはわかりました。それでもう一度確認したいですが、どこまで本気ですか? もしやるとなったら本気で打ち込めますか?」

ボクは正直なんてシビアな事を言う人だと思った。今の日本の研究者で、本気でエンケラドゥス地球外生命研究なんてできるはずがないだろうと。研究試料もなにもない状態でどうやって本気を出せと言うのだ。

「エンケラドゥス地球外生命研究なんて所詮絵に描いた餅だろ。まあ良くてNASAの十八番アルアル詐欺商法、つまりアミノ酸の発見ぐらいの炎上商法、が関の山だわな」とボクの頭の中では瞬間的に分析完了していた。そして「それは高野君の得意とする研究分野だから、ここは高野君をプッシュしてフォローに回ろう」と逃走経路を確保する態勢をとった。

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