メールの案件には「エンケラドゥス探査に関して」と書いてあった。

桜木町駅の改札前で待ち合わせたのは、ボクと高野君と矢野さんと東京薬科大学の山岸明彦さん、そして玉川大学吉村義隆さんの5人だった。ボク達はそそくさと日曜日の家族客やカップルで賑わうカフェに入り、ムサいおっさん5人で車座になって矢野さんを取り囲んだ。

矢野さんはいきなり「エンケラドゥスへ探査機を飛ばして地球外生命探査を行う事に興味ありませんか?」と切り出してきた。

それを聞いてみんなゴクリと唾を飲み込んだ気がした。エンケラドゥスというのは土星の周囲を回っている衛星だ。

ボクは「興味があるかと言われればめっちゃ興味があります」と答えたような気がする。みんな同じような事を言ったと思う。ただボクには矢野さんの質問の重みがよくわからなかった。

土星の衛星で生命を探す

その場に参加していた人はみんな、「アストロバイオロジー」という名の研究会やシンポジウムあるいは研究ヒアリングで「地球外生命探査」というキーワードに何らかの関わりを持っていたはずだ。しかしつまるところ、みんな、夢や希望や願望として地球外生命探査を考えたことはあっても、目の前にある現実のプロジェクトとして捉えていた人は少ないだろう。

山岸さんと吉村さんは日本版火星生命探査プロジェクトを推進しているし、高野君は「はやぶさ2」リターンサンプル科学分析に深く関与している。しかしそれらの研究は、アストロバイオロジーではあるものの、まだリアル地球外生命探査と呼ぶにはかなり果てしない距離がある段階のものだ。

ところが実際に、世界最初の小惑星サンプルリターンを成功させたプロジェクトに関わっていた人の口から「エンケラドゥス地球外生命探査」という言葉を聞くと「マジかよ」という疑問が湧き上がってくるのだった。

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