たしかにその実現は簡単じゃない。一見、途轍もなくハードに見える。

でもボクが研究者を目指していた20歳の頃、果たして自分が実際に深海に潜って生命の起源に近づくような研究をできると想像していただろうか。ボクはただそうなりたいと必死に願っていただけだ。でもそれに向かって一生懸命に突っ走っていたらそうなっていたんだ。

またボクがインド洋の研究で得られた結果を前に微生物学だけで解明できない壁にぶち当たった時、自分が地質学や地球化学の分野でも勝負できる程多分野に精通し、生命の起源に対して真正面から研究を展開することができるなんて想像していただろうか。ボクはとにかくやりたいとジタバタ、ドタバタ暴れていただけだ。でもそれに向かって一生懸命動いていたら多くの仲間ができて、めちゃ楽しくて自然とそうなっていたんだ。

ボクは心の中に逃走経路として確保していた「緊急脱出用のハシゴ」を外すことにした。つまりボクの次の大きなジタバタの目標が決まったということだった。

エンケラドゥスの地球外深海を目指そう。これまでと同じように、それに向けてひたすら暴れよう。それに向かってがむしゃらに動いていたら、いつかきっとそうなるに違いない。

これからはまさに現在進行形の冒険譚だ。一緒にその物語をつくっていこうぜ、みんな。

おわり



『微生物ハンター、深海を行く』(高井研 著)

Webナショジオの好評連載「青春を深海に賭けて」が本になりました。連載の熱気そのままに書き下ろし番外編を加え、高井さんが深海を駆け巡ります!

384ページ・本体1600円+税
発行:イースト・プレス

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高井 研

高井 研(たかい けん)

1969年京都府生まれ。京都大学農学部の水産学科で微生物の研究を始め、1997年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者に。現在は、同機構、深海・地殻内生物圏研究プログラムのディレクターおよび、プレカンブリアンエコシステムラボラトリーユニットリーダー。2012年9月よりJAXA宇宙科学研究所客員教授を兼任。著書に『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る』(幻冬舎新書)など。本誌2011年2月号「人物ファイル」にも登場した。

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