すぐに戻ってくるのかもしれませんが、ぼくも我慢の限界だったので、この機に撮影を終えてキャンプに帰ることにしました。
体中がこわばり、暑さで頭がくらくらしていたものの、ぼくは嬉しくて仕方がありませんでした。
ルーンが抱卵する様子を、あんなにも間近に眺めることができたのです。
まるで世界の秘密を覗いてしまったかのような興奮と、撮影を成功させた達成感で胸がいっぱいでした。
ぼくは、水に浸かったままの足を泥から引き抜くと、ポンチョをかぶったまま、いそいで撮影機材をカヤックに積み込みました。
そのまま乗ったのでは気持ちが悪いので、せめて水だけでも絞ろうと、靴下を脱ぎました。
そのとき、自分の素足を見て、ぞっとしました。
足首に、5センチほどの長さの黒いヒルが2匹くっついていたのです。
小さくとも不気味な姿をしていて、背中に寒気が走りました。
<ヒルなんているんだ……>
痛みもないので、まったく気がつかなかったのです。
いったいいつから吸われていたのでしょう。