第4回 出航は、逆風に弱い帆で

完成した「縄文号」。進水式を待つ。(提供:関野吉晴)(写真クリックで拡大)

 世界で最も静かだと言われるスールー海の夜、まだ空一面に星が輝き、そのど真ん中に天の川が帯となって、水平線まで連なっている。赤道に近いので、北斗七星と南十字星が一緒に見える。村のそばのサンゴ礁に錨をおろして停泊していると、パチャパチャと波がカヌーにぶつかる音が聞こえる。

 2009年7月、私たちはフィリピンの南西にあるスールー海にいた。4月13日にインドネシアのスラウェシ島を出航して3か月が経っていた。コンパスやGPS、海図を使わず、島影と星を頼りに、かつてこの海を渡った先人たちに思いを馳せての航海。当初の予定では4か月でゴールの石垣島に着く予定だったが、とても計画通りにはいきそうになかった。

 2隻の手造りカヌー、縄文号とパクール号のクルーは10人。うち日本人メンバーは4名。渡部純一郎はベーリング海峡や宗谷海峡、パタゴニアなどを一緒にカヤックで漕いだマルチ冒険家だ。佐藤洋平と前田次郎はともに武蔵野美術大学の卒業生。道具作り、カヌー造りを一緒にした後、クルーとして参加した。6名のマンダール人クルーたちはマグロ漁師で、出航地のランベあるいはその近くに住んでいる。年齢も宗教も異なるメンバーが、狭いカヌーの上で生活を共にしていた。