第34話 新たな仲間の出現! しかし彼は、野獣???

「そんな、そんなんじゃないよ……」

 言葉を詰まらせるトビエスを見て、スティーブが、淡々と語りはじめた。

「この数年、熊や狼のような捕食動物の数が多過ぎるのも、事実なんだよ……」

 私は驚いた。

 人間の入植と共に、人の暮らしを優先して、熊や狼を処分してきた結果、数をすっかり減少させてしまっているものと思っていたのだ。

 スティーブは続けた。

「このミンチュミナでも、なかなかムースが捕れないんだ。昔に比べると、ムースを狩る人が少なくなったというのにね……。僕は、スポーツハンティングは好きではないけれど……、でも、捕食動物の個体数調整の役割も果たしているんじゃないかな?」

 冷静なスティーブの話し方は、その場の雰囲気を落ち着かせた。

 しかし、相変わらず空気の読めないトビエスは、再び水を得た魚のように喜びはじめて、
「ほら、スポーツハンティングは悪くないんだよ!」と言う。

 でも、私は思った。

「野生動物の数量調整って、人間が担うものなのかな……?」

 私はどこか、まだ合点がいかなかったのだった……。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/