第5章 1956- 第二期黄金時代からさらなる挑戦へ

第13回 “ミルククラウン”を最初に撮影したのはこのヒトです

1942年のエジャートン。MITの研究室にて。
(c)2010 MIT. Courtesy MIT Museum(画像クリックで拡大)

 人間の視覚は数千分の1秒という瞬間を認識できません。ミルククラウンのほかにも、ラケットに当った瞬間につぶれるテニスボール、放物線を描く飛び込み選手の連続分解写真、舌先を裏側にJの字に丸めて水を飲む猫など、それまで誰も見たことのなかったシーンの撮影にことごとく成功し、人々をあっと驚かせました。

 以降も生涯にわたり、エジャートンは創意工夫を絶やすことなく、写真の新境地を次々と開拓してゆきました。

 第二次世界大戦初期には、飛行機による夜間の偵察のために大光量のストロボを開発し、その結果、ノルマンディー上陸作戦を成功に導きます。

 面白いのは開発時のエピソード。

 当時、飛行機のパイロットには写真撮影に対するアレルギーがあり、エジャートンが夜間の空撮を依頼しても強硬に反対されました。そこで彼はイギリスのヌーディストキャンプの正確な位置を入手し、パイロットに話をもちかけます。すると、パイロットたちは記録的な速さのスクランブル発進を達成しただけでなく、怒ったキャンパーたちがタオルで作った「通報中(REPORTING YOU)」という文字を識別できるほど低空で飛んだそうです。その話を聞いたエジャートンは「私は現実的な人間なのさ」と言ってにやりと笑ったとのこと。ホントに頭の柔らかかった人なんですね。