第47回 森のわが家の常連さん、ハナグマ

ハナジロハナグマ(哺乳綱:ネコ目:アライグマ科:ハナグマ属)のオス
A male white-nosed coati, Nasua narica
雑食性で昼間活動する。オスは単独で、メスと子どもは群れで生活している。嗅覚が優れているが視力は良くないので数メートルまで近づいても気づかれないことがある。
体長:0.5 m 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 モンテベルデの森に引っ越してきて3週間。まだ大量の荷物と格闘中で、森へと続く道は目の前にあるものの、まだ一歩も足を踏み入れられていない。それでも野外調査で来ていたときとは一味も二味も違う、「森での生活」を体験し始めている。

 そのひとつが、家の前で毎日ハナグマに2~3回顔を合わせること。
 お昼ごろ、ぼくが食事の準備などしていると1頭で鼻をクンクンさせながら現れ、何をするでもなく、またノソノソと森の茂みの中へと歩いていく。

 台所にしている部屋(台所がアリません)から漂う食べ物のニオイに引き寄せられているのだろうか。あるいは、家の前で飼育している昆虫たちのニオイに反応しているのかもしれない。実際、昆虫の飼育袋を入れた容器が倒されていたりする。

 夜は、昆虫たちがあまり入ってこないように、ライトをできるだけ暗くして晩御飯をつくる。料理をしながら、暗闇の森の中を見つめてふと思う・・・ハナグマのように、ピューマがノソノソと、こんばんは~と顔を出さないことだろうか?

家の前の昆虫飼育場所の状態
Insect-rearing conditions in front of the house

中央左の開いているドアが家の出入り口で、今のところはその両脇で昆虫を飼育中。風がきついので、昆虫と植物が入ったビニール袋は、クーラーボックスの中や、段ボールにしっかりと固定している。片づけが済んだら、雨風の影響のない室内にも飼育場所を用意する予定だ。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
アワフキムシの一種(カメムシ目:コガシラアワフキムシ科)
A spittlebug
夜、家のトイレで見つけた。明りに来ていたのだろう。採集して白いどんぶりで撮影した。
体長:6 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
キンヒバリやカヤヒバリのコオロギの仲間(バッタ目:コオロギ科)のオス
A brown sword-tailed cricket, Anaxipha sp.
ブロメリアという植物の葉と葉の間で前翅をこすり合わせて鳴いているところ。小さなコオロギで、翅の発音器が発達している。夕暮れ前から夜明け前まで、森はその鳴き声で包まれる。以下のビデオでその音色を聴くことができます。
体長:7 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

月夜のコオロギの合唱と「風の谷」を流れる雲(30秒)
Cricket chorus and flowing clouds in a ‘wind valley’ at a moonlight night

家の前で撮影。「リリリリリリ~」がコオロギで、「チチッ」は、キリギリスの仲間。家と前方の山の間は、貿易風が駆け抜ける谷になっている。ビデオは早送りではありません。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ

西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html