漁に出ることが、橇を引くことの何に役立つのだろうか?

 例えば、遭難したときに、漁ができる犬がいると、重宝するのだろうか?

 私は、首をかしげた。

 スティーブは、子犬たちを船に乗せると、
「おとなしく座って、伏せろ」と、ごく普通の会話のように、子犬たちに言った。

 まだ「おすわり」も「伏せ」の指示も教えられていない、頭の中の記録メモリーが真っ白な子犬たちである。

 そんな簡単に、理解できるわけもない。

 ところが2匹は、スティーブの顔色をうかがいながらも、体を低くして、体を伏せた。

 おおお~。私は、思わず拍手を送った。さすが橇犬の子である。

 しかもこの子たちの母親は、頭の良いリーダー犬だったので、きっと頭の良さは母親譲りなのだろう。

 スティーブは、犬をしつけるときに使うような短い命令語を一切使わないで、子犬たちに指示を出す。

 今度は、「エンジンをかけるから、向こう側に行きなさい」と、理由をつけて子犬たちに言った。

 すると2匹は、スティーブの指差す向こう側を見て、「あっちに行けばいいの?」という顔をしながら、ゆっくりと移動した。

 なんと、賢い……。私は感心していた。

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