漁に出るというのに、橇犬の子犬たちを船に乗せると言うスティーブは、相変わらず、ひょうひょうと口髭を風に揺らしながら微笑んでいた。

 世間のことなど、まだ何も知らない子犬たちだ。

 魚を網から船の中に引き上げたとたんに、バタバタ尻尾を床に叩きつけて逃げようとする魚に、びっくりして暴れまくること間違いない。

 驚いた反動で湖にでも落ちたら、この季節の水は恐ろしく冷たく、運よく引き上げたとしても、濡れた体に、この冬の気温は堪えるだろう。

 絶対に、犬を落水させるようなことになってはならないのだけれど、意外にも私は、ひょうひょうとするスティーブのように、「ま、いいか」と、楽天的だった。

 まあ、子犬たちとは言え、橇犬の子なのだから、そう御バカさんではないだろう。

 それに、犬たちにとっても、船に乗るなんていい経験だ。この際、立派な漁犬に仕込んで、漁のできる橇犬にしようじゃないか!

 と、私は勝手に想像を膨らませて楽しんでいたのだった。

 しかしながら、スティーブの方は、かなり真面目な顔で、「これも橇犬のトレーニングだよ」と言う。

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