第33話 子犬たちと反省……、ドタバタ最後の漁。
漁に出ることが、橇を引くことの何に役立つのだろうか?
例えば、遭難したときに、漁ができる犬がいると、重宝するのだろうか?
私は、首をかしげた。
スティーブは、子犬たちを船に乗せると、
「おとなしく座って、伏せろ」と、ごく普通の会話のように、子犬たちに言った。
まだ「おすわり」も「伏せ」の指示も教えられていない、頭の中の記録メモリーが真っ白な子犬たちである。
そんな簡単に、理解できるわけもない。
ところが2匹は、スティーブの顔色をうかがいながらも、体を低くして、体を伏せた。
おおお~。私は、思わず拍手を送った。さすが橇犬の子である。
しかもこの子たちの母親は、頭の良いリーダー犬だったので、きっと頭の良さは母親譲りなのだろう。
スティーブは、犬をしつけるときに使うような短い命令語を一切使わないで、子犬たちに指示を出す。
今度は、「エンジンをかけるから、向こう側に行きなさい」と、理由をつけて子犬たちに言った。
すると2匹は、スティーブの指差す向こう側を見て、「あっちに行けばいいの?」という顔をしながら、ゆっくりと移動した。
なんと、賢い……。私は感心していた。