渋谷君は孤軍奮闘し、研修生だった吉崎もと子さんといっしょに「原始地球におけるウルトラエッチキューブリンケージ再現実験」を見事に軌道に乗せてくれた。

40億年前の深海熱水は白かった説

それだけでなく、完全放置プレーをじっくり思索にふけることができるというアドバンテージに変え、「地球で生命が誕生したと考えられる約40億年前の深海高温熱水は、現在のブラックスモーカー型の酸性高温熱水ではなく、強アルカリ性の白っぽい熱水だったはずだ」という「原始高温強アルカリ性熱水」仮説論文を書き上げた。

原始高温強アルカリ性熱水仮説論文は、これまでのボクも含めた深海熱水研究者の常識を覆す革新的な深海熱水像を提示しただけでなく、ウルトラエッチキューブリンケージ仮説と互いに足りない所を補うよう形で統合できて、最古の生命誕生シナリオに大きなブレークスルーをもたらすことになった。

さらに言えば、その仮説は「放散虫が誕生もしていなかった太古代(約40-25億年前までの年代)の深海底になぜ大量のチャートが生成されるのか」、あるいは「酸素がほとんどなかったと考えられる太古代の海底になぜ酸化鉄でできた縞状鉄鋼層が形成されたのか」という地球史の研究上の長年の謎をダブルで一気に解決する程の破壊力をもった革命的アイデアだった。

ボクは最初に渋谷君からそのアイデアを聞いたとき、思わず「絶対ありえん!オレは信じねー!」と言ってしまった程だ。しかしその一方で実は(0.001秒)、プレカンラボのお友達第1号である上野雄一郎さんと35億年前の深海熱水の地質学的証拠を議論していた時から、「もしかして今の深海熱水と当時の深海熱水は全く異なるモノだったのではないか」という考えを持ち始めていたのも事実だったのだ。

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