テントの外は、すでに明るくなっていました。

 薄曇りの空の下、あちこちから、キツツキのドラミングが聞こえてきます。

 松ぼっくりを集めに森の中を歩くと、すぐ近くで、チュルルルルーッと舌をならすような鋭い音が響きました。

 シマリスよりもひとまわり大きなリスが、木の上を走り回り、自分のなわばりを主張しているのです。

 自分だけの湖だと思ってここに来たけれど、やっぱりそれは、ぼくの思い上がりでした。

 ここは、ルーンや、ビーバーや、キツツキや、リスたちの生活の場であり、ぼくはただの通りすがりの人間にすぎないということを、ふたたび思い知らされたのです。

厳冬期の寒さが緩み、日が少しずつ高くなってきた。残雪の上でエリマキライチョウが、求愛のディスプレイを見せるようになると、春はもう近い。(写真クリックで拡大)

 蚊たちも、相変わらずよろよろと群がってきますが、火を起こして煙が立ちのぼると、あまり気にならなくなりました。

 お湯を沸かしてお茶を入れ、朝の静かなひとときを満喫しているうちに、雲がすこしずつ晴れてきて、今日もいい天気になりそうでした。

 昨日のうちに準備しておいたカメラとフィルム、そして三脚などの撮影機材や、ブラインド用の緑色のポンチョをカヤックに積みこみました。

 そして、ルーンの巣がある、湖の西の端を目指して漕ぎだしました。

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る