リバーボートに繋いでいるロープを水中から引き上げて引っ張ってみる。

 ときどき船体が横向きになるものだから、水の抵抗が凄くて、重いタグボートでも引っ張っているような気分になった。

 なんとか引き上げると、私は、息を整えるために、尻餅をつくように砂浜に座り込んだ。

「どうしてこの湖は、凍りもしないで、こんなに暴れているの?」
 私は、スティーブに尋ねた。

 もちろん、答えを持つはずのないスティーブは、「さあね」と言うばかり。

「早く凍れ! 凍ってしまえ!」
 苛立ちが募るように、私は波立つ湖に叫んだ。

 大風は、1日じゅう吹き荒れた。

 犬たちの餌やりの時間になっても、風は弱まることはなく、いつもだったら、置いてある皿に、次々とスープを入れていけばよいのだが、このときは、皿が飛ばないように足で押さえながらスープを入れなければならず、いつもよりも2倍の時間がかかった。

 この大風は、本格的な冬を運んできたのだろう。

 次の日は、気温ががくんと下がって、更にトゲトゲしい痛冷たい空気に包まれた。

 まるで、春一番が吹いて暖かくなるのとは逆で、冬一番が吹いて、冬がやって来たようなものだ。

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