第46回 モンテベルデの森へお引っ越し

モンテベルデへ引っ越した。左手前の屋根が新居。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 モンテベルデの森へ引っ越すことにした。
 そう! これまで何十回も足を運び、数々の昆虫を採集してきた、ぼくの恋する森だ(第25回 モンテベルデの恋しい色参照)。

 首都サンホセ近郊の喧騒から脱出したかったし、これまでより調査・研究に集中したかった。空気はきれいだし、水もおいしい! 何より大好きな自然に囲まれているのがたまらない。

 住まいは、以前紹介したモンテベルデのバイオロジカルステーションの一角。ステーションは海外から多くの大学生のグループを受け入れている、授業や研究、宿泊のための施設だが、そのラボの隣にある部屋を借りることができた。

 ステーションの敷地面積は、120ヘクタール(東京ドーム約25個分)もある。敷地内には山が2つ、滝が3つあって、片方の山にはまだ名前も付いていない。観光客は来ず、周りには他の保全林や国立公園が5つぐらい連なり広がっている。これからの調査、研究課題にもってこいの環境だ。

 2月末から、何回かに分けて家財道具を移動させた。もちろん飼育している昆虫たちも一緒。といっても、そのほとんどは以前モンテベルデで採集したものだから里帰りみたいなものだけれど・・・。

 新居の目の前でさっそく昨日、アルマジロとハナグマに遭遇し、今朝はケツァールのオスの鳴き声を聴いた。こんなうれしい歓迎に、これからの昆虫中心生活への想いがいっそう大きく膨らんだ。

ゴミ収集車ではありません。袋の中は飼育中の昆虫たちと植物。これから森へ大きな家具や重たい本などと一緒に大移動。
撮影地:サン・イシドロ・デ・コロナド、コスタリカ(写真クリックで拡大)
引っ越しする昆虫の一員、アカンソプス・ゴッドマニ(カマキリ目:Acanthopidae科)
A nymph praying mantis, Acanthops godmani
去年の11月ごろから飼育しているカマキリの幼虫。以前の家では裏庭の堆肥に集まるショウジョウバエやイエバエを与えていたが、これからはモンテベルデの多様な小型昆虫が食糧になりそうだ。
体長:約30 mm 採集地:エル・ロデオ保全区域、コスタリカ(写真クリックで拡大)
部屋から数メートル歩いて上を向いてみた。モンテベルデ(Monteverde)の意味は、「緑の山」。乾季でも、しっとりとした空気、霧雨が舞う環境なので、緑を湛える森。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
引っ越し先の住まい
A new residence in Monteverde
左手が学生専用のラボで、右手の「黄桃色」のペンキが塗ってある部屋がぼくの新たなラボ兼住まいとなる。「幻の鳥」ケツァール(和名はカザリキヌバネドリ)の声が聞こえている。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
これまで住んでいたサンホセ近郊の自宅
Rearing and lab ambient of the former residence

相変わらず天井からシロアリの糞が降ってくるが、家屋が崩れる前に無事脱出できた。左は裏庭。昆虫の飼育袋がたくさんぶら下がっているが、通常は洗濯場と物干し。右は顕微鏡やパソコンがあるメインラボ。採集してきた虫こぶを解剖したり、ガやチョウを展翅したりしていた。
撮影地:サン・イシドロ・デ・コロナド、コスタリカ(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html