第31話 憧れの有名人がやってきた!
2人の女性が持ってきた、あれとは……、
ちゅ、ちゅうしゃき……である。
何を隠そう私は、大人になった今でも、口に出して言うだけでお尻のほっぺがキュッとなってしまうくらい、注射が大嫌い。
学校のインフルエンザ集団予防接種のときから、何度脱走しようかと思ったことか。
もっと小さかった頃など、親の車に乗って街に出かけると、必ず運転席側から聞こえてくる、
「ここの駐車場がいいんじゃない?」
「じゃあ、そこに駐車しよう」
という会話が、恐ろしくて、恐ろしくて……。
そんな私の目の前に現れたのは、それも大量の注射器。
犬橇のシーズンに本格的に入る前に、犬たちに予防接種をすることになったのだ。
予防注射の種類は、パラインフルエンザやパルボウイルス、アデノウイルスなどのワクチンで、ドッグヤードの犬たち全員に施すことになる。