深海に潜って地球の成り立ちや生命の起源を探る「しんかい6500」パイロットのインタビュー第2回。潜航の1日を追います。海底には映像では伝えきれていない色彩があるのだそうです。(写真:田中良知)
しんかい6500のボディには、どこかで見たようなシールが貼られている。
「検査済 24 116-750 神奈川」
小倉訓パイロット、あれは何ですか?
「あれは、平成24年度の、車でいう、車検のようなものが終わったという印です。本当は、喫水線の上に貼るようにと決められているんですが、潜水船なんでねえ。まあ、この辺かなというところに貼っています。とりあえず、海面では喫水線より上ですから(笑)」
そうか、検査を受ける必要があるんですね。
車でいう、車検のようなものがあるということは、車でいう、運転免許のようなものもあるのですか。
「あります。一級小型船舶操縦士です」
それって、モーターボートなどを運転するときに必要な免許ですよね。
「そうです。それと同じです」
意外と身近。しかし、現在15人いるしんかい6500の運航チームは、モーターボートには乗らず、深い海ばかりを潜る。
運転も整備もチームの仕事
しんかい6500は、母船よこすかに乗せられて横須賀の港を出ると、目的地までは船上待機。目的の海域付近までやってくると、ようやく出番だ。
目的地が遠い場合、その出番がやってきてはじめて、パイロットはしんかい6500を追いかける。目的地に近いよこすかの寄港先へ飛行機で飛んで、そこから乗り込み、潜航を行うのだ。
飛行機は高度1万メートルほどのところを飛ぶ。そして、しんかい6500は最深6500メートルを往く。最大高低差1万6500メートル、つまり16.5キロ。垂直方向の移動距離も、意外と長い。
そして、よこすかが調査海域から離れると、次の寄港先で船を下り、日本へ戻ってくる。
長い航海ではこれを繰り返す。
「主に、休暇を消化するためです。それから、今、しんかい6500の運航チームは、無人探査船うらしまの整備も請け負っているので、その仕事もあります」
ということは、しんかい6500の整備も、パイロットのみなさんがしているんですか? オーバーホールを伴う、大がかりなメンテナンスを年に1度、3カ月間をかけて行っていると聞いていますが。
「そうです。整備もパイロットの仕事です。私はもともとは、整備士だったんですよ」
80日間にわたる「しんかい6500」オーバーホールを4分50秒の超早送りで。(c)JAMSTEC