第11回 体内時計と睡眠習慣の関係がついに明らかに!
三島さんたちが実際に会ったことがある範囲内で(つまり、実験の被験者で、厳密な測定をした人の中で)きわめて体内時計の周期が長い場合、たとえば、24時間30分くらいの人の様子を素描してもらった。
「こういう人はですね、眠くなる時間が毎日毎日遅れていくのを微調整するのが大変で、要するに早寝早起きのほうにずらすことがほとんどできない。何とかその位置を保つのが精いっぱい。物心ついた頃から全然朝起きれない、宵っぱり、寝坊の子ども時代を送って、あとは遅刻の常習魔になるパターンですね──」
24時間10分を平均としてほぼ正規分布、といっても、それほど裾野が広いわけではない。そして、少しでも、体内時計の周期が長いと、三島さんが言う「真の夜型」になりやすくなる。
24時間30分という体内時計は、平均よりもわずか19分遅いだけだが、たったそれだけで現代社会では適応に苦労する。単に夜型というのを越えて、自分の生活のリズムが1日の周期と完全にかけ離れてしまう「非同調型」にもなりかねないという。ましてや、25時間周期だと……大変なことになりそうなのは間違いないのである。
つづく
三島和夫(みしま かずお)
1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。脳病態統合イメージングセンター部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。秋田大学医学部精神科学講座助手、同講師、同助教授を経て、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員助教授。2006年6月より現職。2010年4月より日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事、日本生物学的精神医学会評議員を務める。
川端裕人(かわばた ひろと)
1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』『風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider