第8回 寝不足の子どもは多動や学習障害状態になる

「まあ、現実的でない話をしてもしようがないですね。お母さんたちのライフスタイル、ワークスタイルは決まってるでしょうから、それに合わせつつ、夜10時に眠らなければならない子には、照明のテクニックなども使って体内時計を修正してあげるような心構えも必要でしょう。もっとも、お母さんが非常にロングワーカーで、帰宅時間も遅い、家を出る時間も早いなんてことになったら、物理的にお子さんの睡眠は圧縮されるわけです。そのようなときには、レスキューのしようがない。アメリカなんかですと、ベビーシッターを使って自分の帰宅前にご飯でも、就寝の準備でもさせて、寝かしつけるアルバイトとかが山ほどあるわけで、もうちょっと家の中にまで入り込むような育児のサポートがないと、子どもの睡眠習慣は保てないですよね……」

 女性と子どもの睡眠の問題は、社会の問題。そして、それは非常に根が深く、働く女性自身の生きづらさ、子育てのやりづらさ(それは、直接的に少子化にもつながりかねない)から、子どもの情動や学習面での問題にもつながっていくものであり、とても大きな問題でもある。そのように捉えるのが妥当だ。

女性と子どもの睡眠はとても大きな問題だ。(写真クリックで拡大)

つづく

三島和夫(みしま かずお)

1963年、秋田県生まれ。医学博士。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所精神生理研究部部長。脳病態統合イメージングセンター部長。1987年、秋田大学医学部医学科卒業。秋田大学医学部精神科学講座助手、同講師、同助教授を経て、2002年米国バージニア大学時間生物学研究センター、米国スタンフォード大学医学部睡眠研究センター客員助教授。2006年6月より現職。2010年4月より日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事、日本生物学的精神医学会評議員を務める。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)などがある。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)はNHKでアニメ化され、「銀河へキックオフ」として放送された。近著は、独特の生態系をもつニュージーランドを舞台に写真家のパパを追う旅に出る兄妹の冒険物語『12月の夏休み』(偕成社)、天気を「よむ」不思議な能力をもつ一族をめぐる、壮大な“気象科学エンタメ”小説『雲の王』(集英社)(『雲の王』特設サイトはこちら)。
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