ルーン(=ハシグロアビ)のただならぬ雰囲気に圧倒されて、声も出ません。

 襲いかかってくるのかと思って、パドルを握る手に力が入りました。

 しかし、それ以上ルーンが近づいてくることはありませんでした。

 悲鳴にも似た叫び声をあげて、翼と足でバシャバシャと水しぶきを上げながら、目の前を左右に行ったり来たりしたあと、そのまま、水中に潜ってしまったのです。

 そして、少し離れたところに浮かび上がって、神経質そうに首を左右に振りながら、もうひと鳴き、鋭い声を上げました。

 ぼくは、はっとして、ルーンが飛び出してきた方向を見ました。

 あの慌てようからして、思い当たる節があったのです。

 予想した通り……水際の茂みの中には、ルーンの巣がありました。

 草を編んで作られた、浮き島のような直径70センチほどの丸い巣です。

 くぼんでいる巣のまん中には、黄土色をした卵がふたつ、先のすぼまった方をこちらに向けて、仲良く並んで横たわっていました。

 <これを守ろうとしていたんだ……>

ジャックパインの木立を前に、ひとり雪の上にたたずむ。風のない冬の朝の静けさは、時が止まったかのようだ。(写真クリックで拡大)

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