「冬というものは、寒く、雪に覆われていなければならないんじゃ……。それが自然のバランス」

 オリバー爺さんは、そう静かに言った。

「そうですね……」

 私も静かに頷いた。

 そして、私たちは、深くため息をつくばかりだった。

「ところで犬橇はな……、」

 突然、オリバー爺さんは、ぽつりと話しだした。

「犬橇は、車に乗るのとは違うぞ。今では、犬橇に代わってスノーモービルが雪道の足になったが、そんな鉄の塊とも、まったく違う」

「なんとなく分かります……」私は頷いた。

「犬橇はな、とにかく静かなんじゃ……、橇が滑る音と犬たちの息使いのほか、静寂につつまれる……」
 そう言うと、オリバー爺さんは、
「本当に、犬橇はいい……」
 と、何度も静かに呟いた。

 若い時代は、オリバー爺さんも犬橇使いだった。

 そのことを、懐かしく思い出したのだろう。

 今度は、私がぽつりと話しだした。

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