第30話 雪が待ち遠しいのに、地球がオカシイ……。
「冬というものは、寒く、雪に覆われていなければならないんじゃ……。それが自然のバランス」
オリバー爺さんは、そう静かに言った。
「そうですね……」
私も静かに頷いた。
そして、私たちは、深くため息をつくばかりだった。
「ところで犬橇はな……、」
突然、オリバー爺さんは、ぽつりと話しだした。
「犬橇は、車に乗るのとは違うぞ。今では、犬橇に代わってスノーモービルが雪道の足になったが、そんな鉄の塊とも、まったく違う」
「なんとなく分かります……」私は頷いた。
「犬橇はな、とにかく静かなんじゃ……、橇が滑る音と犬たちの息使いのほか、静寂につつまれる……」
そう言うと、オリバー爺さんは、
「本当に、犬橇はいい……」
と、何度も静かに呟いた。
若い時代は、オリバー爺さんも犬橇使いだった。
そのことを、懐かしく思い出したのだろう。
今度は、私がぽつりと話しだした。