第30話 雪が待ち遠しいのに、地球がオカシイ……。
「私の故郷も雪国ですが、近年は、降る雪の量が少ないんですよ」
と、言うと、
「そうか……、地球がなんだかおかしいのお……」
オリバー爺さんは、うつむき加減に頷いた。
「そう言えば、カナダやアラスカ東部の森が死んできているんですよ」
私はアラスカに来るときには、カナダから車で走ってくる。
その時に、延々と地平線を覆うほどの枯れた森を目にしていたのだ。
「それは、パイン・ビートルじゃ……」
オリバー爺さんは言った。
森に何10年も籠っていながら、爺さんは外界のことを良く知っている。
パイン・ビートルというのは、コガネ虫を黒くしたような昆虫で、この虫の体に付着している菌が、樹木の内部に侵入して枯らしてしまうのだ。
北米は、数年ほど前から森林の立ち枯れ被害が尋常ではなく、原因は、菌を運んでしまうこの虫が越冬して、数が多くなったからだと言われている。
年々その被害は拡大していて、今まで森林が失われる原因のトップだった山火事以上に、大きな問題になっている。