この取材は、よこすかが1月5日に横須賀を離れる、そのおよそ1週間前に行った。
カメラマンT中は、いつもよりレンズを多く持ってやってきた。
ナショジオ編集部Y尾は愛息に自慢するため、しんかい6500と自分とのツーショットを撮ろうと意気込んでいる。
しかし、そのしんかい6500の姿が見えない。聞けば、すでによこすかに積み込まれているというのだが……。
しんかい6500は、6500のその名の通り、最大潜航深度6527メートルを記録し、潜航回数も1300回を突破した、有人の潜水艇である。
早く見たいです。
が、その前に、母船よこすかの船内を案内してもらうことにする。
格調高き「よこすか」船内へ
まず、船に乗っかって見える、4階建てのビルのような設備(上部構造物と呼ぶそうです)の、4階部分から。
前方にあるのはもちろん、操舵室だ。たいへん見晴らしが良い。航行中はなおさらでしょう。
部屋の中央には電子海図の装置がある。これで、現在位置や進行方向を確認する。
神棚もある。船の神様・金毘羅さんが祀られている。
操舵室の後方には、無線室。ここが、しんかい6500との交信を行う部屋だ。
コックピットのようなたたずまいの「管制表示部」には、受話器が取り付けられている。懐かしの緑電話のような見た目。この水中通話機を使って、しんかい6500に乗船中の人と会話をする。
電話と違うのは、まず、一方通行でしか話せないこと。話し終わったら「どうぞ」と相手の発言をうながす。タイムラグは最長で8秒。
ちょっと昔の、テレビの国際生中継みたい。話しにくいことでしょう。
モニターには、しんかい6500のとらえた映像が音響信号で届き、10秒に1度、静止画で表示される。
管制表示部の脇のスペースには、ものものしい鉄の箱が並んでいる。コンピューターだ。これがないと、画像は何も表示されないのである。