第29話 オリバー爺さんの珍食性、ナマタリアン

「わしのように老いた体は、最低限度の栄養摂取でいい。無駄にエネルギーを貯めると、かえって障害になる」

 確かに彼は、太り過ぎで膝や腰に負担がかかっているとか、甘いものを摂り過ぎて、内臓疾患を抱えているといったことがまったく無い。

 細胞の老いだけは避けられない宿命ではあるけれど、爺さんは、まったくの健康優良老人だ。

 と言うものの、それが健康長生きの秘訣だとしても、なかなかオリバー爺さんのような食生活は送れない。 

 それに、パイクのぷりぷりとした白身を見ていると、心も頭のなかも、魚フライとタルタルソースに支配されてきて、もはや、それしか考えられないのだ。

 適温でサクサクとあがり、油から引き上げられたばかりのフライを手にすると、私は、アツアツ、ほふほふと、むさぼり食べた。

 そして、それを見ていた爺さんは私に言った。

「若い者は、それでいいんじゃ……」

「はい!」

 我ながら元気のいい返事だった。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/