第29話 オリバー爺さんの珍食性、ナマタリアン

 戦争が終わって、アラスカの森の奥に住み着いたオリバー爺さんは、食べ物を森から得る自給自足の生活を送ってきた。

 常に食料に恵まれるとは限らない生活の中では、栄養補給のロスをシビアに考えなければならない。

 森では、しっかりと栄養をとって、筋力や精神力を保たなければならないために、火を通すことによって栄養が失われることを避けてきたのだ。

 それに、現代食の中心である、焼いたものや、油で料理したものには、微量ながらも過酸化脂質や発癌性物質(焦げに含まれる複素環アミンなど)が含まれていると言われている。

 これは、普通の食事ならば、まったく無視してもよい量なのだが、徹底的に健康に気遣いながら、森の中で仙人のように暮らしているオリバー爺さんにとっては、たとえ少量であれ、健康を害する「毒」のようなものなのである。

 そんな現代食を一切口にしないオリバー爺さんは、魚の生の卵を、そのまま指でちぎりながら、少しずつ食べるのだと言う。

「わしにとって、魚の生の卵は、キャンディーみたいなものじゃよ」と、爺さんは微笑でいた。

 その顔を見て、私は目を丸くした。

「甘いの?」