リスク・テイカー 危険覚悟の挑戦者

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氷の海でサンゴの調査

リーアン・ウォーラー

文=パット・ウォルターズ 写真=マルコ・グロブ

リーアン・ウォーラーは米国メーン大学の海洋生物学者。彼女の研究対象は水深1000メートルほどにいるサンゴだ。深海のサンゴは生態系を支える重要な存在だが、底引き網による被害が年々深刻になっている。しかし、その生態についてわかっていることは少ない。調査方法は限られていて、ウォーラーは長い間、潜水艇の窓から海中に目を凝らしたり、無人探査機で撮影した映像を見て、研究するしかなかった。しかし数年前、アラスカのフィヨルドの浅瀬に深海のサンゴが何種類か生息しているのが見つかった。スキューバダイビングで潜れる程度の水深だったが、一つ問題があった。ウォーラーはダイビングをしたことがなかったのだ。

――ダイビングの初心者なのに、よくアラスカの冷たい海に潜りましたね。

確かに大変でした。水温はいつも1℃くらいで、水中に5分もいると頭と手がしびれて、感覚がなくなります。氷河が解ける夏は水の流れが速くなるし、氷河に含まれる堆積物が流れ出るので、視界も非常に悪くなります。

――氷の海に潜るようなものですが、怖くありませんか?

細心の注意を払っていますが、恐怖を感じたことがないと言えば嘘になります。自分の肘も見えないほど視界が悪い日もありました。私はバディ(潜水のパートナー)の空気ボンベにつかまって、フィヨルドの壁に沿って垂直に潜っていたのですが、サンプル採取用の袋を取ろうとしてほんの少し手を離した隙に、彼を見失ってしまったんです。フィヨルドの壁も、自分の手足も見えず、上も下もわからなくなりました。自分が吐き出した空気の泡が上がっていく方向を見て、水面がどちらかわかりました。

――それでも、危険を冒すだけの価値があるのですね?

もちろんです。映像でしか見たことのない深海のサンゴの間を泳ぐ時は、言葉にならないほど感動します。高さ2メートル近い巨大なオオキンヤギ科のサンゴの群落にも遭遇しました。自分の目で見て、触れているうちに思いました。同じ場所に何度も行けたら、どれほど研究が進むだろうかと。深海ではほぼ不可能ですけどね。まだデータの分析中ですが、アラスカのフィヨルドで観察したサンゴの多くは、考えられていた以上に成長に時間がかかるようです。つまり、サンゴをはじめとする生態系は、人間の活動による影響と被害を受けやすい存在なのです。

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