大学時代、サイロの中の穀物が爆発する原因を調べるうちに、粒々のシミュレーションにのめりこんだ研究者、阪口秀(さかぐちひで)さん。地震の兆候をとらえる研究にも着手しました。津波と火山のシミュレーション動画もぜひご覧ください。(写真:田中良知)
粒子の動きをシミュレーションするソフトで、JAMSTECの稼ぎ頭となっている阪口秀さんが、今、最も関心を持っているテーマは、地震だ。
それも、予知に関わることである。
どうやって予知をするのか。それには、阪口さんの経験が生きている。
破壊の前に起きる変化とは?
「大学で農業工学をやっていたとき、岩石を破壊する実験と、その数値シミュレーションもしていました。圧力をかけた岩石は、破壊が始まる直前に、それまでとは違う動きをします」
それまでとは違う動き?
「最初から行きましょう。まず、地面に置いた岩石に上から圧力をかけると、上下方向には縮んで、水平方向に伸びますよね」
それは想像できます。岩石ではイメージしづらいけど、ほかのもう少し柔らかいものなら、目にも見えますし。消しゴムを上から押さえつける感じで。
「岩石を点に分解して考えてみると、そのとき、点はどれもが、下へ行きながら外へ行っています」
下へ行きながら、外へ行く。そうですね。
「圧力をかけ続けて限界まで上下方向に縮めると、各点がこれ以上は下へ行けないので、一斉に非対称な水平方向に動く、つまり破壊が始まります」
岩石で言えば、割れる。
「その破壊が始まる直前、それぞれの点がそれまでのようには動けなくなると、いったん、動きに迷いが出るんです。一点一点、みんなが行き先に困ってバラバラに動く。その後、ではここからここまでの粒子はこっちへ行きましょう、そこからそこまではあっちへ動きましょうと決まって、バリバリッと破壊が起こります」
ということは?
「破壊の前には、不規則な動きという、予兆があるんです」
おおっ。地震の予知と、つながりそうです。
粒々シミュレーション動画(5)
粒の圧縮の様子(提供:JAMSTEC/阪口秀)