File3 JAMSTECの稼ぎ頭 阪口秀

第3回 地震の前のサインを読む!

「怪しいけど成果が出ている、ならいい。でも、怪しいだけで『一体全体、何やってんだ』と言われてしまうのは、良くないことだと思います。僕は、怪しいと思いながら入ってはきましたが、今や、愛する職場ですから、いい人材が入り続ける、長続きする場所であってほしいと思っています。その気持ちは、たぶん、誰よりもあります」

 そして、アメリカ航空宇宙局(NASA)を引き合いに出して、こうも断言するのだった。

「NASAは、いろいろな問題はあるけど、世界中から憧れられている存在です。でも、JAMSTECが、いまいち、海のNASAになりきれていないのは、僕が言ったように、かっこよくない部分があるからです」

一人くらい変な奴がいたほうが


 そろそろ、お時間です。

 阪口さんは笑いながら「こんな話でいいんですか。ボツでしょう、書くことないでしょう」と言い残し、去っていった。
 取材陣もそそくさと引き上げようとすると、広報担当者が歩み寄ってくる。

 ナショジオ編集部Y尾とライターK瀬の頭を、同じことがよぎる。
 ああ「ここは書かないで」「あの部分は勘弁して」と言われるんだろうな、とっても興味深い話ばかりだったのに。どうやって説得しようかな。

 広報担当者は言った。

「阪口秀らしさが伝わる記事にしてください」

 以上。

 またしても、ぐうの音も出ない取材陣。

 そういえば、阪口さんはこうも話していたっけ。

「JAMSTECへ来て1年くらい経ったとき、深尾先生に呼び出されて言われたんですよ。
『お前、変だな』と。
 クビになるんだと思いました。あーあ、ダメだったか、と。
 地球内部ダイナミクス領域に所属しているのに、そのときは、直接は関係ないことばかりしていましたしね。

 そうしたら、深尾先生は今度はこう言ったんです。
『一人くらい変な奴がいた方が、いい研究所になる。お前を、その“変な奴”に指名しよう』

 あとで、学生時代の友人にこの話をしたら『それは、研究者にとって最大の勲章だよ』と言われました。『いっそ、乗っ取っちゃえ!』とも(笑)。

 確かに、変なことをしている人がいる研究所の方が、生き延びるんですよ。
 この間、深尾先生にこの話をしたら『そんなことは言ってない』って、否定されましたけどね(笑)」

体育館のような地球シミュレータセンターの前で(写真クリックで拡大)
この記事は日経ビジネスオンラインとの共同企画です。
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片瀬京子(かたせ きょうこ)

1972年生まれ。東京都出身。98年に大学院を修了後、出版社に入社。雑誌編集部に勤務の後、09年よりフリー。共著書に『誰もやめない会社』(日経BP社)『ラジオ福島の300日』(毎日新聞社)など。