第28話 出たあ~! ワニ顔の怪魚!

 そこに、ちょうどオリバー爺さんが杖をついてゆっくりとした歩調でやってきて、老いて力ない体で、ゆっくりと台所まで歩いてくると、スティーブから、その容器を受け取った。

 嬉しそうに微笑んで、
「これはワシの、おやつみたいなものじゃよ」とニコリとする。
「え? おやつ?」

「そうじゃ、ワシは魚の身の方は食べんが、卵は食べるんじゃ」
「身を食べず、卵だけ?」
「そうじゃ、卵だけ」
「でも、もうすぐ、この白身をフライにしますよ。食べていってください」

 私は、タルタルソースをかけた白身フライディナーを、オリバー爺さんにも食べてほしかった。

 しかし爺さんは、大事そうに卵の入ったタッパを脇に抱えて、玄関の方へ歩いていくと、

「フライは、お前さんたちが食べればいい。ワシは要らんよ」と言う。
「だったら、その卵、料理してあげますよ」
 私は、とっさに引き止めるように言った。
「いやいや、これは生で食べるんじゃ」
「え! 生で!」

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/