阪口さんの実験室。中央にあるのがエアホッケーを改造した実験装置。(写真クリックで拡大)

「台の上にものを並べて、ひとつをある速度で打ったり押したりします。すると並べた全体がどう動くのかを、上に取り付けたカメラで撮影します。粒子の動きの2次元シミュレーションです。その実験には、この台がいいんですよ。摩擦が少なくて手っ取り早い。よそからも、これで実験させてほしいと頼まれることがあります」

 エアホッケーの台が、こういう用途に使われるとは、作っている側も予想しなかったことなのではとも思うが、力学の業界では、エアホッケーの台が便利というのは、当たり前のことなんだそう。

「でも、買うときには、周りから大ブーイングでしたよ」

 何に使うのかわからなければ、反対したくもなるかも。

「いくらだと思います? この間、たまたま見たテレビで、ドバイの巨大ショッピングモールにあるゲーセンに全く同じものがあるのを発見しましたけど」

エアホッケーをクレーンで搬入する。(写真クリックで拡大)

 きっと1000万円はしませんよね。とライターK瀬。
 500万円? 200万円?とナショジオ編集部Y尾。
 ドバイという言葉に引っ張られ、また、JAMSTECにある装置は数千万円クラスであることに慣れつつある取材陣は、頭の中がインフレ状態になっている。

「80万円です」

 あら、意外とお安い。自宅にもあってもいいかも。

「ただ、分解できないからエレベーターに乗らなくて、窓を外してクレーンで入れました。横浜港からここまで運んで、クレーンでつり上げて設置するのに、37万円」

 計117万円。よくよく考えたら、自宅にこれを置くだけのスペースはない。大きな窓もない。

ぶら下がり健康器も。(写真クリックで拡大)

 この実験室には、砂山やぶら下がり健康器もあるが、これも実験装置の一部である。

「衝撃実験に使うぶら下がり健康器は、通信販売で7000円くらい。これも、業者に頼んで作ってもらったら5万円や10万円しますからね」

 使う機器を自分で工夫して作っていく。
 これはこれまで話を伺ってきたJAMSTECの研究者共通の方針だ。

「他人がやらないことをやらないとね」

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