File3 JAMSTECの稼ぎ頭 阪口秀

第2回 ドケチでビビリの精神が生んだアルゴリズム

前回まで: オーストラリアでの苦い経験を経て、「稼ぐ研究者」になるべくJAMSTECにやってきた阪口秀さん。開発したソフトは、エネルギー業界から鉄道、インク業界までひっぱりだこに。どうしてそんなソフトが開発できたのでしょうか。(写真:田中良知)

阪口秀さん(写真クリックで拡大)

 JAMSTECで10年連続(実はまだ9年とちょっと)売上げナンバーワンの、稼ぐ研究者・阪口秀さん。売り物は粒々の動きをシミュレーションするソフトだ。

 いったいなぜ、そういうものを作ろうと思ったんですか?

「そもそもは、学生の時ですね」

 阪口さんは京都大学農学部の出身。農学博士でもある。

「サイロの設計とか勝手に色々研究してたんです」

サイロが爆発する!?


 取材陣の頭には、北海道の牧場の風景が広がる。
 広大な土地、草をはむ牛、その傍らにそびえるサイロ。

「サイロって、ほんわかした風景の一部でしょう。でも、爆発するんですよ」

 爆発?

「サイロに貯蔵した穀物を排出するときに大爆発を起こして、人が死ぬこともあります」

 なんでそんなに大爆発するんですか?

「なんでなのか、まだ完璧には理解されてないんです。サイロの中身がセメントなどでも同じことがあって、粉塵爆発(空中に浮遊する粉塵が爆発すること)の可能性が高いのですが、実験をやってもわからない。それで、シミュレーションで見られないかと」

 穀物一粒ずつをシミュレーションをしようというわけだ。サイロには一体何粒入ってるのだろう?
 時期は1980年代後半。パソコンが発売されて間もない頃で、大規模なシミュレーションをするには、ハードウエアのパワーが足りない。

「絵に描いた餅、できない、と言われていました。ただ、概念はすでにイギリスのピーター・カンドールによって1960年代に作られ、1970年代後半には論文にされていたので、その人の手法を勉強しました」